1. はじめに:今、最も求められる「知的競争力」とは

AIの進化が加速する現代、私たちは日々、与えられた問題を解き、成果を出すスピードを競っています。しかし、本当に今求められている力は、その問題解決力よりも、さらに上流にある能力かもしれません。

それは、「そもそも、何が問題なのだろう?」「何の問題を解くべきなのか?」という根源的な問いを立てる力。すなわち、課題設定能力(問題設定力)です。

与えられた問題を解くのは得意な人が多くいる一方、「何を解いたらいいのか」という問いを社会に投げかけられる人は少ないのが現状です。この課題設定能力こそが、「社会に通用する唯一の知的競争力」といえるでしょう。文章力企画力向上を目指す社会人が、コンセプチュアルスキルを体系的に鍛える訓練として「本を書く」ことの価値を解説します。


2. 本を書くことは「知的な立場表明」である

では、社会人にとって「本を書く」という行為は、どのような意味を持つのでしょうか。

本を書くのは、あくまで目的を達成するための手段です。著者であるあなたが、社会に対して「自分は何を問題だと考えているのか」、「私はここが課題だと思う」ということを提示すること、これこそが執筆の本質です。単発のブログやX(Twitter)での発信ではなく、本にする文章を執筆すること。それは知的な立場表明であり、あなたのコンセプトの表明なのです。

本を出版すると周囲の人から「すごい」と尊敬されるのは、その行為が「問いを立てて構造を設計し、読者に伝える」という極めて高度な知的行為だからに他なりません。これは誰しもができるわけではない、あなたの知的競争力を示す行為なのです。


3. 出版実践でコンセプチュアルスキルを鍛える「知的スキル三階層」

私たち「VM出版スクール」では、経営学者の楠木建氏が紹介しているKatz, Robert Lの「知的スキル理論(テクニカル、ヒューマン、コンセプチュアル)」[※1]を土台に、出版という実践を通じて、受講生一人ひとりの知的スキルを階層的に鍛えるカリキュラムがあります。出版は、この三階層のスキルを総合的に試す「実技」なのです。

階層1:テクニカルスキル —「なぜ書く資格があるか?」を問う企画力の土台

テクニカルスキルは、専門知識と技術の手続きを指します。出版においては、「なぜ自分がこのテーマを書く資格があるのか?」という問いに答えるための力です。具体的には、自身の経験や感情、知識といった専門性(皆さんのベース)を言語化し、棚卸しする力、そして「今これが求められている」と言い切れる企画力につながります。

階層2:ヒューマンスキル —読者の心を掴む文章力と目次設計

ヒューマンスキルの定義は説得力、対人関係力です。出版実践では、読者のハートをキャッチできる表現を練り、わかりやすい目次立てを行うなど、論理的に考えを伝える文章力を磨きます。

階層3:コンセプチュアルスキル —問題設定と構造設計で知的競争力を築く

最も重要なのがこのコンセプチュアルスキルです。物事の本質を捉え、構造を理解し、問題を設計・設定する力です。出版において、社会に対して「何を問題としてどう切り取るのか」を決定し、企画の核を立てる力(テーマ抽出や問題設定)を徹底的に鍛えることで、高い知的競争力を築きます。


4. 企画力を最大化する「問いを立てる著者」の思考トレーニング

このトレーニングのゴールは、単に「伝えられる」だけの著者ではなく、「君たちは何をしたいの?」と社会に問いを投げかけられる人、すなわち「問いを立てる著者」になることです。

そのために、本を書くという総合演習を通じて、以下の思考の階層構造を構築する訓練を行います。

  1. 問題設定:何を問題だと考えているのか。
  2. 構造構築:それを伝えるための目次(構造)を設計する。
  3. 読者の納得:本を読んだ後の読者に、どのような感想をもってもらいたいか。
  4. 行動の喚起:最終的に読者がどのような行動をとってほしいか。(例えば、問合せや申込、購入、来店など)

この一貫したプロセスを構築できる知的スキルを育成するため、VM出版スクールではAIと人間のトレーナーからのフィードバック(添削コメント、採点)を受け、企画や文章を書き直す知的PDCサイクルを徹底的に回します。

特に評価観点として、抽象度・概念操作力(抽象語の定義や言い換えの適切さ)や、論理構造の明快さ(説明順、因果、情報の並び)といった、思考の質に直結する観点でフィードバックが得られます。


5. まとめ:「書くこと」は知的トレーニングの出発点

書く力とは、決して正解の暗記ではなく、問いを構造で考え表現する力の訓練によってのみ鍛えられます。

この本を書くトレーニングを通して、で企画力コンセプチュアルスキルを体系的に育て、「企画とは何か」「なぜあなたが書くのか」「誰に届けるのか」を言語化し、社会に問いを立てる著者への第一歩を踏み出します。VM出版スクールで、あなたの知的競争力を最大化しませんか。

【参考文献・註釈】
※1.知的スキル理論について:Katz, Robert L., “Skills of an effective administrator.” Harvard Business Review, September-October, 1974.

(話者:VM出版スクール代表 古川亮/文章:VM出版スクール 菅野)

話者:古川 亮(ふるかわ・りょう)
株式会社バーニャカウダ 代表取締役
オンライン相談『ボイスマルシェ』創業者
VM出版スクール代表
出版支援実績:250タイトル以上。
起業家・経営者へのコンサルティングや新規事業開発も手掛ける。
VM出版スクール WEB

<略歴>
一橋大学 商学部経営学科卒業。 2002年4月、株式会社リクルートに入社。住宅情報(現SUUMO)事業部、マーケティング局、HR事業部(人材採用支援部門)に配属され、法人営業や戦略コンサルタント、事業企画等に従事。2012年3月、オンライン相談『ボイスマルシェ』を創業。日本最大級のオンライン相談プラットフォームに成長させる。2020年から『VM出版スクール』を開始し、2025年3月時点で受講クライアント440名以上、出版支援実績250タイトル以上。
・2014年にSMBCベンチャーキャピタル、2016年にSMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル三生キャピタルによる第三者割当増資を受け、事業成長中。
・一橋大学ビジネスプランコンテスト審査員(2017年/2018年)
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